豹戦車
PzKpfw Panther  パンター

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豹戦車 Pz.Kpfw. Panther パンターについて

ソビエト軍のT34に対抗して開発、生産されたのがPanzerkampfwagen V、パンターである。
制式番号:Sd.Kfz.171. Pz.Kpfw. Panther
独ソ戦開戦時ドイツ陸軍では、20トンクラスの次期中戦車VK20.01の開発が進んでいたが、T34ショックからVK20.01では性能不足と判断され、計画は30トンクラスのVK30.01に変更した。
前線部隊の指揮官からは、T34をコピー生産して配備すべきという意見もあったぐらい、T34に対する恐怖心は大変なものがあった。
機甲部隊の専門家だったハインツ・グーデリアン将軍は、T34の脅威を軍上層部に報告し、対抗できる新型戦車の開発を早急に行うよう要請した。
そのような背景から、パンターはライバルのT34の影響を多く受けているため、傾斜装甲・大火力の搭載砲など外観はT34に似ている。
ただ内容はT34とは違いドイツ的戦車に仕上がっている。
T34はディーゼルエンジンだが、パンターはガソリンエンジンを搭載している。
さらに装甲もT34より厚く、防御重視のドイツ的設計思想が顕れている。
各種の要求を盛り込んだため、重量は増加して43tとなった。
搭載する新型70口径の75ミリ砲は、短距離の装甲貫徹力は88ミリ砲を上回っていた。
期待がかけられた最初の量産型であるD型が生産され、1943年7月のチタデル作戦までに約200両が配備されたが、初期トラブルに見舞われ散々なデビューとなった。
当初はトラブルが多発したD型であったが、A型G型と改良されて名実共にドイツ軍の主力戦車となっていく。



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***パンター戦車D初期型***
全長:    8.86m
車体長:   6.88m
全幅:    3.43m
全高:    2.95m
全備重量: 43.0t
乗員:    5名
エンジン:  マイバッハHL210P30 4ストロークV型12気筒液冷ガソリンエンジン
最大出力: 650hp/3,000rpm
最大速度: 55km/h
航続距離: 169km
武装:    70口径7.5cm戦車砲KwK42×1 (79発)
        7.92mm機関銃MG34×1 (2,500発)
装甲厚:   16〜100mm
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***パンター戦車A型***
全長:    8.86m
車体長:   6.88m
全幅:    3.43m
全高:    2.98m
全備重量: 45.5t
乗員:    5名
エンジン:  マイバッハHL230P30 4ストロークV型12気筒液冷ガソリンエンジン
最大出力: 700hp/3,000rpm
最大速度: 55km/h
航続距離: 177km
武装:    70口径7.5cm戦車砲KwK42×1 (79発)
        7.92mm機関銃MG34×2 (4,200発)
装甲厚:   16〜110mm
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***パンター戦車G型***
全長:    8.86m
車体長:   6.88m
全幅:    3.43m
全高:    2.98m
全備重量: 44.8t
乗員:    5名
エンジン:  マイバッハHL230P30 4ストロークV型12気筒液冷ガソリンエンジン
最大出力: 700hp/3,000rpm
最大速度: 55km/h
航続距離: 177km
武装:    70口径7.5cm戦車砲KwK42×1 (82発)
        7.92mm機関銃MG34×2 (4,200発)
装甲厚:   16〜110mm

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パンターエース、エルンスト・バルクマン Ernst Barkmann

1944年7月27日、ノルマンディーのサンローからクータンセへ続く街道の曲がり角、フランスの片田舎で、一人の第2SS戦車師団所属の戦車長が戦史に残る戦いを見せることになる。
この日、バルクマンSS上級軍曹のパンターA型戦車はエンジン不調のため、部隊より脱落し1両で行動中だった。
友軍歩兵より付近にアミーの戦車が前進してきているという情報を得て、バルクマンは単独で米軍戦車部隊を迎撃することを決意し、愛車パンターを街道沿いに前進させる。
街道曲がり角付近の樹木のかげにパンターを隠し、米軍戦車を迎え撃った。
M4シャーマンが角を曲がるや、バルクマンのパンターは射撃を開始した。
M4シャーマン戦車2両撃破を手始めに、バルクマンのパンターは次々に米軍車両を撃破した。
突然茂みから攻撃された米軍は混乱に陥り、街道周辺に散り散りばらばら状態となる。
パンターの砲手ポッケンドルフは冷静に照準を定め、戦車、トラック、ジープを撃破していった。
恐怖に陥った米軍は、たった1両のパンターのために空軍に支援を要請した。
まもなく上空にヤーボが現われ、バルクマンのパンターに爆撃を開始した。
バルクマンは後退を命じ、一時撤退した。
バルクマンのパンターは後方で急いで損傷箇所の修理を行い、再び前進した。
前線に戻ったパンターはM4シャーマン2両を始め、トラック、ジープなど多数を撃破した。
米軍の先鋒部隊に、充分な損害を与えたと判断したバルクマンはパンターを後退させた。
この日の戦闘でバルクマンのたった1両のパンターは、M4シャーマン戦車9両、トラック、ジープなど多数を撃破した。
この街道上曲がり角の一連の戦闘は戦後「バルクマンコーナー」と称され、戦史に刻まれることになる。

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バルクマンパンター、D型時代の写真。
バルクマンコーナーの戦いのときはA型に搭乗していた。
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7.5 cm KwK 42 L/70 (7.5 cm Kampfwagenkanone 42)

パンターに搭載された7.5 cm KwK 42は、通常徹甲弾を使用した場合、距離2000メートルまでティ−ガーの88ミリ砲を装甲貫徹力で上回っていた。
榴弾の場合は、サイズが大きく炸薬量の多い88ミリ砲が有利である。
高速徹甲弾では全ての射距離でティーガーの88ミリ砲が上回っているが、高速徹甲弾Pzgr40はタングステンの不足から1両に数発補給されればいい方で、殆どの戦闘は通常徹甲弾を使用していた。
当初車体の初期トラブルで戦車兵に不評であったパンターだが、火力に関しては43年当時、敵味方双方の戦車砲で最高の装甲貫徹力は高く評価された。
チタデル作戦に間に合わせる為、変速機や足回りの強度不足、燃料漏れなどの問題が解決されぬまま投入され、問題多発のデビューとなったが基本性能が劣っていたわけではない。
実戦投入を急ぐあまり、詰めが甘いまま投入された結果であり、D型の改良調整済みとして生産されたA型は、現代のMBT的運用思想を先取りした戦車となった。
不運のデビューとなったチタデル作戦もパンターを投入したいヒトラーの意向から延期され、作戦と新型戦車双方にとって不運な結果となってしまった。
二兎を追う者は一兎をも得ずの諺の通り、ヒトラーの派手な演出を好む性格と強欲さが招いた結果だろう。

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7.5 cm KwK 42を開発製造したラインメタル・ボルジヒ社は、現在でも最高レベルの技術を持った兵器メーカーであり、フランクフルト証券取引所に上場し、ドイツの主要企業の一つである。

8.8cmKwK36L/56装甲貫徹力(垂直)
距離(m) 25 100 250 500 750 1000 1250 1500 2000 2500 3000
貫徹力(ミリ)Pzgr39(773m/s) 149 147 142 135 128 123 116 111 102 92 82
貫徹力(ミリ)Pzgr40(930m/s) 246 242 233 219 205 200 179 167 143 123 101
7.5cmKwK42L/70装甲貫徹力(垂直)
距離(m) 25 100 250 500 750 1000 1250 1500 2000 2500 3000
貫徹力(ミリ)Pzgr39(925m/s) 173 170 165 154 146 136 128 119 103 88 73
貫徹力(ミリ)Pzgr40(1120m/s) 228 223 214 196 180 165 150 138 113 94 73

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