ヒトラーとポルシェ博士の巨大な玩具
Panzerkampfwagen VIII Maus マウス


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Panzerkampfwagen VIII Maus マウスについて

この世に、化物のような巨大戦車がかつて存在した。
188トンの鋼鉄の塊、最後の超重戦車、陸上戦艦思想の末裔ともいうべき産物が「マウス」試作重戦車である。
1942年6月8日、ヒトラーのお気に入りの老博士、フェルディナント・ポルシェ工学博士は、重駆逐戦車エレファントの搭載砲打ち合わせのため、ベルリンの総統官邸を訪れた。
この打ち合わせにはアドルフ・ヒトラー総統と、アルベルト・シュペーア軍需大臣が出席していた。
ヒトラーはエレファントに71口径88ミリ砲を搭載することを望み、ポルシェ博士は善処するという回答をし、会議は纏まった。
本議題終了後、ポルシェ博士はある新型重戦車の開発許可を求めた。
それは今までにない、超重戦車の提案であった。
回転砲搭に128ミリ砲と副砲の75ミリ砲を搭載し、可能な限りの重装甲を施すというものであった。
ヒトラーはこの提案を承諾し、開発許可をポルシェ博士に与えた、これが後のマウスとなる。
(超重戦車開発の計画はヒトラーが持ち出したという説もある)
ヒトラー総統直々に開発許可を得たポルシェ博士は、ドイツ兵器局と正式な契約を交わした。軍需大臣のアルベルト・シュペーアやハインツ・グーデリアン上級大将は、貴重な資材の浪費として反対したが、ヒトラーの意向には逆らえず、正式契約となった。
ポルシェ社では、シュツットガルトの事務所で設計を開始した。
この試作重戦車には、ポルシェ社の開発コード「205」が与えられた。
ポルシェ社では設計製造する製品全てに開発コードが割り当てられていた。
現在有名なスポーツカーのポルシェ911や356といった番号だが、この911、356も開発コードであり、今でもマウスなどに続いてナンバーが割り振られている。

資材不足の状況下でも開発は着々と進んだ、超重戦車の試作車の開発製造には様々な企業が加わった。
*クルップ社:武装を含む砲塔と車体の製作。
*スコダ社:転輪、サスペンション、キャタピラ、最終減速機の製作。
*ダイムラーベンツ社:ガソリンエンジンDB603Aの製作。
*ジーメンス・シュケルト社:発電機ユニットと電動モーターの製造。

1943年12月24日、試作車の走行実験がアルケット社の実験場で行われた。
このとき砲塔が未完成だったため、55トンのコンクリート製のダミー砲塔を乗せて実験が行われた。
結果は速度以外は意外にも「良好」であった。
マウスの特徴としてエレファントと同じように、内燃機関で発電しモーターを駆動するというポルシェ博士お気に入りの方式だった。
マウスの名称だが、実験場のテストパイロットのカール・ケンズベルクが、車体に鼠の絵を小さく書き込んだのが由来ともいわれる。
アルケット社で組み立てられた2両の試作マウスは、クーマンスドルフの戦車実験場に輸送され、各種の実験が繰り返された。
一時150両の量産が決定されたが、アルベルト・シュペーア軍需大臣によってキャンセルされた。
ドイツには超重戦車を生産する余力は無くなっていたのである。
戦局の悪化にともない、計画は放棄された。
終戦間際にクーマンスドルフ実験場に、接近してきたソビエト軍にマウスが発砲したという話もあるが、真偽は不明である。
ソビエト軍に捕獲されることを避けるため、2両の二十日鼠(マウス)は、爆破処分される。
現在ロシアのグビンカ戦車博物館に展示されているマウスは、爆破された2両のマウスを組み合わせて組み立てたものを展示している。

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***マウス重戦車 試作第1号車***
全長:    10.09m
車体長:   9.03m
全幅:    3.67m
全高:    3.66m
全備重量: 188.0t
乗員:    5名
エンジン:  ダイムラー・ベンツDB603A V型12気筒液冷ガソリンエンジン
最大出力: 1,080hp/2,400rpm
最大速度: 20km/h
航続距離: 186km
武装:    55口径12.8cm戦車砲KwK44×1 (25発)
        36.6口径7.5cm戦車砲KwK44×1 (200発)
        7.92mm機関銃MG34×1 (1,000発)
装甲厚:   40~280mm


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マウスの装甲について

マウスの装甲は40ミリから200ミリの圧延鋼板で製作されていた。
砲塔前面の曲線部分は240ミリ。
防弾性能を高めるため、装甲板にハッチやスリットは一切設けられず、装甲表面はのっぺらぼうの状態になっている。
車体側面の装甲だが、上部が185ミリ、下部の走行装置を防御する部分は105ミリと厚さが違う。
しかし走行装置が組み込まれている内側の部分が80ミリあるため、合計の厚さは車体上部と変わらない。
鋼板の素材だが、クロム・ニッケル鋼、クロム・マンガン鋼、クロム・ニッケル・モリブデン鋼が使用された。
これは当時、この時期に生産されていたドイツ軍戦車の標準的な鋼材であった。

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マウスの武装について

マウスの武装は128ミリ対戦車砲KwK44と、75ミリ砲KwK40を同軸に搭載していた。
それと歩兵制圧用に7.92ミリMG34を、砲塔に主砲とは非同軸に搭載していた。
128ミリ対戦車砲はヤークトタイガーに搭載されたものと同じ砲である。
同軸搭載の75ミリ砲は、初期の4号戦車に搭載されていた短砲身75ミリ砲を36.6口径に延長したものを搭載している。
搭載砲弾数は128ミリ砲が25発、75ミリ砲が200発、機銃弾1.000発であった。
これらの火器の照準器は、戦後ソビエト軍が期待と羨望を持って調査を行ったが、当時のドイツの光学機器のレベルからするとかなり低いものだったらしい。
ステレオ式の照準器を搭載する計画もあり、簡易的な照準器を暫定的に搭載していたのかもしれない。
いずれにせよ試作車であり、計画途中なので中途半端な部分が出てくるのだろう。

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マウスのエンジンと変速装置について

マウスのエンジンには2種類が存在した。
一つはダイムラーベンツ社の1000馬力ディーゼルエンジンで、もう一つはメルセデスベンツ社の航空機用エンジンを、ダイムラーベンツ社が戦車用に改造した2000馬力ガソリンエンジンだった。
1000馬力ディーゼルエンジンは、試作2号車に搭載されたが爆破処分によりエンジン部分は激しく損傷し、ソビエト軍による調査は行われなかった。
ガソリンエンジンDB603Aを搭載した1号車は、エンジンの損傷が比較的軽微で戦後詳細に調査したようである。
マウスはこれらのエンジンにより、発電機を回して発電しモーターを駆動するという、エレファントと同様な特殊な駆動装置を持っていた。
エレファントの場合、実戦部隊からは、エンジン→発電機→モーター駆動という方式は、燃費が悪いという評価はあったが、システム自体は操縦がやり易い等、意外に好評であったという。
マウスのような超重量級戦車には、通常の変速装置では磨耗が激しくなることが予想されるから、このような電気式変速装置は効果的なのかもしれない。
アルケット社の実験場における走行実験では、良好という結果が出ているから188トンという大重量ではあるが、それなりに動いたと想像される。
でも軟弱地での走行では地中に潜り込んでしまって、大人数で掘り出している写真も見かけたが・・・

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